コモンプロジェクト : 広域交流型オンライン社会科地域学習(広島大学教育ヴィジョン研究センター(EVRI))

プロジェクト紹介

広域交流型オンライン社会科地域学習

みんなで声を合わせて言ってみよう「もしも広島大学がなかったら?」

吉川小学校からの草原(和)教授の呼びかけで、オンラインでつながった東広島市内の約180名・5つの小学校の子どもたちの元気な声が1つになり、さながらTV番組のように、広島大学からの配信、下見学生街から新しいまちの様子を説明する熊原准教授の中継、ドローンでの空撮映像などのコンテンツが流れ、対話型の授業が展開されます。

2022年2月9日に、東広島市と広島大学の連携により、小学校社会科の副読本を教材とする「広域交流型オンライン社会科地域学習」が実施されました。

遠隔教育での地域学習用のデジタルコンテンツとして、東広島市のマスコットキャラクターの名を冠した「のん太の学び場」。開発及び連携して行われた地域学習は、次世代の教育をデザインし実現する拠点になることを志向する、広島大学教育ヴィジョン研究センター(Educational Vision research Institute、略称「EVRI」)の草原(和)センター長・拠点リーダーをはじめとする皆さんによるものです。
これまでに、市内の小学校3年生及び4年生を対象に、交通、防災、産業、伝統文化、消防、国際関係などの様々なテーマを題材として取り組まれ、その成果がデジタルコンテンツとしてインターネット上に公開されています。

山から海まで、広大な市域を有する東広島市には、仮設校舎での授業が続く大規模校から複式学級となっている小規模校まで、特色ある地域の姿を映すように様々な学校が存在します。
デジタル化の進展などにより社会が加速度的に変化を増す中で、子どもたちの成長の基礎を育む学校教育は重要性を増しています。どの地域にも質の高い学校教育を展開することは東広島市における地域課題であり、新型コロナウイルス感染症の拡大で外出に制限があるという時勢もあって、他者との交流の中で育まれる社会性や協調性への懸念といった部分へのカバーを含め、遠隔教育に対する期待は高まりつつあります。

今回の5校をつなぐ地域学習では、現地での授業のサポート、センターでの配信、中継補助など、18名の学生の方に関わっていただきました。
実際に子どもたちを前に双方向の遠隔授業が展開されている中で、進行管理や状況の変化に対応するために、並行して開かれている別回線では常に現場とセンターとのやりとりが行われています。
コロナ禍の影響もあって、通信機器類の進化は徐々に身近なものになっています。「概ね3回くらい経験いただければ、支援いただく学生さんも慣れていただけます」と話していただいたのは、センターの草原(聡)さん。

授業が終われば、協力いただいた学生さんを交え、意見交換会が行われます。事前準備の重要性、単元目標へのアプローチ、各校の先生方との協力、声の出し方など現地での工夫や気づき、通信トラブルへの対処方法など、様々な意見や気づき、感想、改善案などが学生さんから発表されます。

「傍目には面白そうに立ち振る舞えても、教育の目的や内容の本質を深く理解していないと授業はできない」
「人口集積地の学校と過疎が進む地域の学校では条件が異なる。現場の教師の考え方も変わる。その中で、教育とは何か肌で感じていただきたい」・・。

草原(和)教授から次々と熱いコメントが学生さんに返され、議論が進みます。

「私たちの取組みが全国に広がってほしい」
「大学が協力することで、子どもたちの刺激になってくれるとうれしい」
「学校での事前のグループディスカッションから参加させていただき、とても良い経験となった」

感想をいただいたのは、いずれも教員志望の大岡さん(センターから参加)、佐藤さん(高屋東小学校から参加)、森本さん(福富小学校から参加)。
現地での授業、センターでの配信、現地での中継作業をそれぞれ経験することで、遠隔授業のスキルも向上するそうです。

東広島市教育委員会の沖情報教育推進室長からは「EVRIの授業の作り方や、教材、使用機器などの選択は、教育現場においてもとても参考になる。現場の教員だけではできない。次年度はさらに本格的なものとなるようコンテンツをブラッシュアップさせていく予定であり、引き続きしっかりと連携させていただきたい」と今後の展望を語っていただきました。

多様な地域を抱える中での質の高い教育の実施、コロナ禍における双方向型の学習機会の提供、地域学習に対する教員の負担軽減など、東広島市の学校教育の現場における課題は、地域固有の課題ではなく、全国に共通する課題でもあります。
今後もますます需要が高まると考えられる遠隔授業のさきがけとして、市を題材に行っていただいたEVRIの取組みがさらに発展し、その手法が浸透していくことに期待しています。

 

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