広島大学が持つ教育・研究資源を地域の学びに活かす取り組みの一環として、広島大学生物生産学部附属の練習船「豊潮丸」を活用した体験航海が開催されました。
「豊潮丸」は中国・四国地方で唯一となる国立大学附属の中型練習調査船で、普段は学生や研究者の教育・研究拠点として利用されています。今回は東広島市立木谷小学校の児童を対象に、海洋の世界を体験する特別プログラムを実施しました。
体験では、避難・防災訓練を通じた安全対策の学習、操舵室やエンジンルームの見学による航海士の仕事理解、さらにプランクトンネットで採集した微小な海の生き物を顕微鏡で観察するなど、海洋生態系の奥深さに触れる内容が盛り込まれました。
こうした学びを支えるのは、広島大学副学長で大学院統合生命科学研究科教授の小池一彦先生による専門的な解説です。
児童たちは、地域の特産品であるカキとプランクトンの関係や海洋生態系の仕組みについて、わかりやすい説明を受けながら理解を深めました。
学生によるレポート
東広島市立木谷小学校の5年生と6年生の児童たちが豊潮丸に乗船し、実際の海洋調査を体験する様子を取材しました。
教育や研究調査のため瀬戸内海のみならず広い海域で活躍する豊潮丸と、初めて調査船に乗り興味津々な児童の様子をご紹介します。
豊潮丸についての詳細は下記リンク先をご参照ください。
クリックまたはタップすると豊潮丸のウェブサイトを開きます。
船の印象・出航
10月21日の早朝、豊潮丸に乗船するため、東広島市安芸津町の三津湾を訪れました。
岸壁に停泊していた船は、見上げるほど大きく、高さのある船で、全長は40m、総トン数256トンもあるとのこと。

豊潮丸(側面)
同市の関係者、引率の小学校の先生、児童全員が乗船し、いよいよ出航です。
観測体験
まず、沖合へ出て海の透明度を観測しました。
透明度の測定には、白い円盤状の道具を用います。ゆっくりと水面下へ沈めていき、円盤がギリギリ見えなくなる深度(透明度)を記録します。
児童が水面をのぞき込んで観察すると、5mまで沈めたときに円盤が見えなくなりました。
この方法で測定した深さの3倍の深度まで、プランクトンが光合成できるほどの太陽の光が届くそうです。
つまり、三津湾では、測定した5mの3倍である深さ15mまで植物が生育できる光が届いているということになります。

透明度観測
続いて、プランクトン採取を体験しました。
直径30cm程度の細かい網目のネットを小型のクレーンで海深20mまで沈めます。少し時間をおいて引き上げると、茶色く濁った海水が網の底に溜まっていました。この海水に含まれた茶色い物質がプランクトンです。

プランクトン採取
船内にある教室へ移動した後、児童一人ひとりに採取したプランクトンが配布されました。児童たちはカップを照明の光にかざしたり、教室の図鑑で調べたりと、興味津々で観察していました。
教室に備え付けのスクリーンに映し出された顕微鏡の映像には、円筒形のプランクトンがぎっしり詰まっていました。これは「コシノディスカス」というプランクトンで、牡蠣の餌としても非常に重要な種であると説明されました。
船内見学
観測体験の後は、船内の見学です。
操舵室では船を操縦するための様々な装置の説明がされ、児童たちは実際に操縦席に座り舵を握りました。魚群探知機やコンパス、レーダーなども紹介されました。児童たちは、双眼鏡で自分たちの住む町を眺めたりもしていました。

操舵室
続いて案内されたのは機関室です。豊潮丸は3基のディーゼル発電機によって発電し、その電力でスクリューを回しているそうです。
船内を見学しながら、豊潮丸で働く船員さん達が、船上での仕事について、児童たちに話を聞かせてくれました。
業務はシフト制で、0時から4時、4時から8時、8時から12時の時間帯に分かれており、例えば0時から4時がシフトの船員は、「午前」0時から4時と、「午後」0時から4時の計8時間担当するそうです。
「4時から8時のシフトでは、毎日日の出と日の入りを見られる」などの説明を聞き、児童たちは船で働くことの大変さとやりがいについて理解を深めていました。
採泥機見学
最後に、採泥機で海底の泥を採取しました。
海底の泥は海の健康度を調べるために重要で、汚染が進んだ海の泥は腐った卵のような臭い匂いがするそうです。

採泥機
採取した三津湾の泥の匂いを嗅いだ児童たちは「全然臭くない」と感想を言い合い、安芸津の海の状態が良好であることを実感していました。
また、泥の中に住むシャコなどの生物も興味深そうに観察していました。

観察する児童
感想
練習船の中には研究や航海のための多種多様な装置が並んでおり、私たちが普段乗ることが出来る客船とは違った雰囲気でした。
取材当日はあいにく波が高く船が揺れ、下船すると足腰の疲れがどっと押し寄せてきました。
今回のような東広島市と広島大学が密接に関わり合い、同市ならではの海をフィールドにしたリアルな学習は、児童たちにとって視野が広がる貴重な体験となったのではないでしょうか。
今後も東広島市独自の教育機会が増えることを期待しています。

豊潮丸(正面)
- 取材者:広島大学先進理工系科学研究科 宮田 智史
- 取材日:2025年10月21日
2023年度、2024年度の体験航海については下記の記事をご覧ください。

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