学生から職員へのインタビュー
このインタビューについて
東広島市・広島大学 Town & Gown Office (以下、TGO)職員の方へのインタビュー記事の後編です。
後編では、主にTGOが始まってからの変化についてお話を伺いました。
TGOの職員として、広島大学スマートシティ共創コンソーシアム (以下、共創コンソーシアム)の活動に携わる中で、何が変わっていったのか、どのような影響があったのか深掘りしました!
※インタビュー内容および出向者は、取材時(2025年3月)時点の情報です

インタビューの様子
Q7. 共創コンソーシアムの取組が始まってから、計画段階からの変化はありますか?
打越東広島市では、Town & Gown構想に賛同する企業の協力を得る中で、進むべき基本的な方向性や今後実施すべき諸施策のアイデアを総合的にまとめた「次世代学園都市構想」を2022年(令和4年)3月に策定しています。
構想策定後、共創コンソーシアムの活動を3年間重ね、構想が実現に近づいていくにつれ、より具体的な調整を求められるようになってきています。
「そんなこと無理だ!」という発想ではなく、「どうすれば実現可能か」を関係者で考えていく必要があり調整が難しいながらもやりがいを感じているところです。
成田変化しかありません。そもそも社会情勢が計画段階から大きく変化しているからです。
例えばTGOが始まった5年前にはまだChatGPTはありませんでしたが、現在では広く普及しています。
このように当時良かったアイデアも変わってきているので、当初計画した方向性は残しながら、情勢に合わせて変えていくことが求められます。
Q8. 市役所からTGOに来られて民間企業の方と働く中で、ご自身が感じられている変化はありますか?
打越私を含めて、これまでに市から4人が広島大学のTGOに出向してきており、民間企業だけでなく、大学の教職員の方々など、多様な方と仕事をさせていただいています。
そうした中で、私は、民間企業の方々のリスクを踏まえつつ、思い切った判断をされているスピード感にとても影響を受けていると感じています。
一般的に行政機関で新たな事業を行う場合には慎重に意思決定を行う面が強く、その反面として意思決定が遅れがちな面がある中で、民間企業の方々の機会を捉えたスピード感ある意思決定を行っていこうという姿勢には、学ぶべき点がたくさんあると感じています。
当然、民間企業と行政機関には、それぞれ違いがあり、行政機関としての強みを感じる機会も多々ありますが、TGOでの経験を、今後の東広島市での業務にも生かしていきたいと考えています。
Q9. 共創コンソーシアムへの参画が、企業側に影響を与えたことはありますか?
成田TGOへ出向しているため、より組織(フジタ)一丸となって共創コンソーシアムの活動に取り組むきっかけとなっています。
また、今までの産学官連携では1部署同士のつながりが多かったのに対し、共創コンソーシアムでは大学と市が組織レベルの協力体制を構築しています。
このことで市、大学の上層部まで事業に対する意識が浸透しており、企業としても共創コンソーシアムに参画しやすくなっている側面もあります。
Q10. TGOでの仕事と東広島市あるいはフジタでの仕事との類似点、相違点は何ですか?
打越TGOでは調整業務がメインであり、そういった面では市の政策企画部門の仕事と近いと感じています。一番大きな相違点はスピード感だと思います。行政の場合は、どうしても公正・公平性を考えることが必要で、スピード感は遅くなりがちです。
ただ、TGOで働く際は、行政職員としての公正・公平性の視点を維持しつつも、企業のスピード感に合わせる努力を意識的にする中で取り組んでいます。
また、調整先の幅の広さもTGOの特徴だと思います。
コモン(COMMON)プロジェクトでは市の担当課と大学の先生、時には市民とも調整を行います。共創コンソーシアムではさらに企業も加わってきます。
成田前部署では権利調整業務を行っており、地権者の対応をすることが主でした。今は大学の先生や市、企業の職員とともに仕事をしています。しかし相手が違っても信頼づくりのためにコミュニケーションが必要であることには変わりありません。
違うのは作業場所です。前部署ではマンション開発のために外回りに出て、直接コミュニケーションを取りに行っていました。今はオフィス内か大学内なので外に出ることが少ないです。連絡もオンラインが増え、その便利さを感じる一方で、信頼関係の構築には対面に勝るものはないと実感しています。
Q11. TGOに広島大学、東広島市、企業の方々が集まることで得られたメリットはありますか? また、難しいと感じることはありますか?
打越同じ空間で仕事をしている分、情報共有が非常に早いです。また、今までの担当課と大学の先生というような属人的なつながりに比べ、組織間のつながりが強くなっています。
一方で組織文化の違いを感じることも多いです。また、共創コンソーシアムの分科会では、大まかな方向性は決まっているので、議論をより活発にし、多くの意見を出し合えるようにすることを意識しています。
成田個別企業と大学あるいは市の1対1の関係で、新しい発想で各分野のアイデアを取り込み、魅力的なスマートシティを実現していくことは不可能ではないかと感じています。
一方で、共創コンソーシアムでは、より広範な視点で目指すべきスマートシティを捉え、大きな事業に共創で取り組みやすい点が大きなメリットであると思います。
様々な組織の方が集まっているので意見がまとまりにくいこともありますが、一度方向性が決まると進みやすくなります。全員の意見を取り入れることはどうしてもできないので、本当に重要なことは何なのか、説得力のある意見であるかといった観点から、より良い方向性が見出されるように気をつけています。
Q12. 市、企業の立場からTGOへ求めることはありますか?
打越市の担当者としては、今までは広島大学との関係が属人的になっていた部分も多々あるのではないかと感じています。
市と大学が組織的なコミュニケーションを深め、そこに企業の活力が融合することで、より魅力的な東広島市となれるよう期待しています。
成田もっと認知度の向上を行うことが必要だと思っています。
特に大学や市といった内部への周知が欠かせません。TGOのモデルとなっているアリゾナ州立大学は市民や学生への周知ができており、見習う点が多々あります。
そのため、まずは学生への周知を目指し、私も携わるTGOアプリでは、部活やサークルの紹介を載せ、直接連絡を取れる機能を設けるなど、新入生に便利と思ってもらえるアプリとなるよう常に改良を続けています。
また、アプリの機能を設けるだけではなく、その活用促進に向けて、部活やサークルなどの活動団体に直接紹介をするとともに、広島大学東広島キャンパスの入学式においても新入生向けに紹介を行うなど、積極的に認知度向上の取組も行っています。こうした地道な周知活動と積極的なアプローチが今後も必要であると考えています。
Q13. 将来的にTGOで何に取り組みたいですか?また、新たに参画してほしい業種や企業はありますか?
打越コモンプロジェクトはキッカケづくりとして進めておりますが、その中の一つでも良いので全国モデルとなるような事業に成長させていきたいと思い、日々取り組んでいます。
共創コンソーシアムの活動としては、今は広島大学東広島キャンパス内の実証実験を行っていますが、将来的なまちづくりへの展開にも市職員として携わりたいと思っています。
新たに参画していただきたい業種・企業については、共に東広島市を変革するという意欲と心意気のある企業に是非参画いただきたいと思っています。
成田東広島を魅力的な街にしていくまちづくりをしていきたいです。
現状では、まちづくりをするにはまだまだ企業の数が足りていません。そのためにもより多くの企業、特に東広島市の企業に参加してほしいと思っています。
共創コンソーシアムの活動に参加したいと思えるような「まち」の理想像を作り上げたいです。

このインタビューの前編はこちらから!
- 聞き手: 広島大学 工学部第一類 宮田 智史
- インタビュー実施時期: 2025年3月
東広島市・広島大学 Town & Gown Office
- Mail: tgo hiroshima-u.ac.jp
- ※メールアドレスをクリックすると開くお問い合わせフォームもご利用いただけます。
- Tel: 082-424-4457