レポート : 三津湾産牡蠣の試食会に参加しました!

広島大学と東広島市は、COMMON(コモン)プロジェクトにおいて「三津湾の特性を生かした養殖の効率化・高付加価値化」をテーマに、三津湾内での効率的な養殖技術開発について研究を進めています。
近年の海⽔温上昇や貧栄養化に伴い、かきの⽣育不良が続く中、漁業者の所得安定を⽬指す取り組みとして、本プロジェクトが始まりました。
また、清浄海域である三津湾の特性を⽣かし、この環境に適した地場採苗のかきを養殖する試みも進められています。

学生によるレポート

2026年2月6日(金)に東広島市安芸津生涯学習センターにて、「令和7年度 COMMONプロジェクト 三津湾産牡蠣(かき)の試食会」が開催され、TGO学生スタッフとして参加しました。

会場の様子

今回の試⾷会では、⼤きな問題となった令和7年産かきの⼤量へい死についての説明会が設けられました。
試⾷会のはじめに、COMMONプロジェクトでの研究結果として、広島⼤学統合生命科学研究科の⼩池教授から、⽔質調査等を踏まえた三津湾の現状や、かきの⼤量へい死の要因等について説明がありました。

続いて、⼩池教授のもとでかきの研究に取り組むマルムラ美野⽔産の美野森也さんから、2024年に初めて三津湾で採苗し、養殖した地場産のかきについて紹介が⾏われました。
また、東広島市産業部農林⽔産課の岡本係⻑からは、令和7年度産かきの⼤量へい死への対応状況が報告されました。

その後、参加者は三津湾産の新鮮なかきを、蒸し牡蠣や焼き牡蠣で試⾷しながら、交流を深めました。

本レポートでは、特に印象に残った⼩池教授から伺った海底⽔揚⽔装置「SPALOW」を⽤いたCOMMONプロジェクトの成果について、マルムラ美野⽔産の美野さん、東広島市農林⽔産課の平⽊主任主事に伺ったCOMMONプロジェクトに関するお話について、ご紹介します。

海底⽔揚⽔装置「SPALOW」を⽤いたCOMMONプロジェクトの成果について

(広島⼤学統合生命科学研究科 ⼩池教授)

⼩池教授は、海⽔温の上昇やエサ不⾜が深刻化する中、「今後さらに⽔温が上がる環境でも、かき養殖として何ができるのか」を考え、海底にある冷たく栄養豊富な⽔に着⽬したそうです。

説明を行う⼩池教授

海底の泥の中には、かきのエサとなる植物プランクトンの種が存在しており、太陽光が届くことで発芽します。こうした栄養源を含む冷たい海底⽔を効率的に巻き上げるために開発されたのが、海底⽔揚⽔装置「SPALOW」です。
SPALOWは当初、⼩池教授と東広島市が共同研究で開発し、その後、広島⼤学が獲得した別の⼤型予算を活⽤して⾼機能化が進められました。

かきを養殖するための「いかだ」の上にSPALOWを搭載すると、搭載していない「いかだ」と⽐べて、夏場の⽔温が約0.7℃低下し、エサとなる植物プランクトンの多い⽔域の⽔温も優位に下がったとのことです。また、昨年度は、SPALOWを搭載したいかだで養殖したかきは、未搭載の場合と⽐べ、むき⾝重量が約1.5 倍となり、グリコーゲン(肝臓や筋⾁に蓄えられる動物のエネルギー貯蔵多糖類)の量も、やや多い結果が得られたそうです。

海底⽔揚⽔装置「SPALOW」
(写真提供 : 東広島市)

⼀⽅、昨夏に起きたかきの⼤量へい死に関しては、SPALOWを搭載していてもへい死率の低下は限定的でした。
その要因として、「昨夏の環境はSPALOW をもってしても改善しきれないほど過酷だった」ことに加え、「海⽔温が⾼くなる中で、海底⽔の酸素量が低下しており、そのような⽔をかきに直接曝露したことで、へい死の抑制効果が相殺された可能性」が挙がりました。

⼩池教授は、「かき養殖の現状は厳しくなっていると思うが、来年度は取⽔する⽔深を変えるなど、できることから改善していきたい」「このCOMMONプロジェクトは2年⽬の終わりにさしかかっている。毎週海へ地道に⾏って調査を続けていたことで、昨夏に起きたかきの⼤量へい死の原因が少しずつ明らかになり、改めて現場の継続的な調査の重要性を実感している」「この研究を進めていなければ、へい死の原因はよく分からないままだっただろう。原因がわからない状態が最も良くない。だからこそ、このプロジェクトに取り組んできて本当に良かった」とこれまでの取り組みを振り返り、今後については、「⼤学の研究室だけでなく、かき養殖の事業者や⾏政が連携して取り組むことが、特に農学や⽔産の分野では⽋かせない」と述べ、三者協働の意義を強調されました。

COMMONプロジェクトについて

(マルムラ美野⽔産 美野さん)

美野さんが⼩池教授のもとで研究を始めたきっかけは「かき養殖の現状をなんとかしたい」という思いでした。
しかし、ここまで⼤規模なへい死が起こることは、想定していなかったそうです。

週1回のSPALOWの調査に加え、採苗期には週2〜3回の海上が当たり前という状況で、負担を感じることもあったそうです。
それでも、⼩池教授とともに、SPALOWに通信機器を搭載して、海⽔データをリアルタイムで可視化できたときには、「取り組む意味があった」「やっていてよかった」と実感したそうです。

また、採苗などは予算⾯で厳しく、COMMONプロジェクトや東広島市からの⽀援が⼤きな助けになっている、と話されました。

COMMONプロジェクトとしての今後の研究について

(東広島市農林⽔産課 平⽊主任主事)

来年度に向けての継続研究について、平⽊主任主事は「当初は、令和6〜7年で集めた⽔質データを収集し三津湾の特性を明らかにすることを⽬標としていました。
しかし、今年度の⼤量へい死を受け、へい死対策を検討する必要があると判断し、⼩池教授と相談の上、来年度も定点での⽔質調査を継続することとしました。
来年度の調査において、今年度と同様の兆候が⾒られた際には漁業者への注意喚起が出来ればと考えています」と話されました。

感想

今回の試⾷会を通して、三津湾のかき養殖の現状を深く知ることができました。
昨今、深刻になっているかきの⼤量へい死の問題に対し、このような画期的な取り組みがなされていることを改めて知り、海底⽔揚⽔装置「SPALOW」やデジタル技術を活⽤したかき養殖が広く実⽤化されるようになってほしいと思いました。
また、試⾷したかきは、うまみが強く、蒸し牡蠣も焼き牡蠣も⾮常に美味しく、三津湾産かきの魅⼒を実感しました。より多くの⼈にその美味しさが伝わり、東広島市のブランドとして広まってほしいと感じました。

COMMONプロジェクトを通して広島⼤学と東広島市のそれぞれが強みを活かすことで、かき養殖が抱える問題を解決するための⼤きな⼀歩となると感じ、今後のCOMMONプロジェクトの取り組みに、さらなる期待を寄せる会となりました。

三津湾産の牡蠣
COMMON(コモン)プロジェクトとは ?

東広島市の社会課題と大学の学術研究をマッチングさせた社会課題解決を目指すプロジェクト。

  • 東広島市と大学が「共通(COMMON)」の課題に取り組む姿勢
  • お互いが先生役の「顧問(こもん)」となって教え合いながら社会課題の解決を目指す姿勢

この2つの言葉を掛け合わせた造語。

インタビュー概要

  • 取材 : 広島大学 総合科学部 国際共創学科 山崎 茉奈
  • インタビュー実施時期: 2026年2月

お問い合わせ

東広島市・広島大学 Town & Gown Office
  • Mail: hhc hiroshima-u.ac.jp 
  • ※メールアドレスをクリックまたはタップすると開くコモンプロジェクトに関するお問い合わせフォームもご利用いただけます。
  • Tel: 082-424-4457
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